『ウルトラマンと「正義」の話をしよう』(朝日新聞出版

 現代思想や国文学的な方法論で作品を読解。軸は「正義論」だが、隣接分野へ越境することにより、総合的な作品論になるよう構成。特に近代合理主義の功罪や、オルテガ的な、大衆迎合主義、80年代以降の消費者至上主義への批判に力を入れて書いた。



プロローグ

 ・ 『ウルトラマン』とは何なのか
 ・怪獣映画の「祖」ゴジラ

第1章 「正義」と『ウルトラマン』

 ・正義の味方 ウルトラマン登場
 ・血を吐きながら続ける悲しいマラソン−−『ウルトラセブン』「超兵器R1号」
 ・「正しさ」を疑う−−『ウルトラセブン』「ノンマルトの使者」
 ・ウルトラマンの正義

第2章  ウルトラマンの「科学」と「自然」

 ・ウルトラマンと「科学」
 ・バルタン星人の過ち
 ・ウルトラマンが人間を倒す時−−『ウルトラマン』「故郷は地球」
 ・科学への憧憬
 ・被爆国だから描けること−−核の恐怖
 ・機械化=非人間化する恐怖−−『ウルトラセブン』「第四惑星の悪夢」
 ・自然への回帰−−『帰ってきたウルトラマン』「津波怪獣の恐怖 東京大ピンチ」
             『帰ってきたウルトラマン』「二大怪獣の恐怖 東京大竜巻」 

第3章  近代化する日本と『ウルトラマン』

 ・合理主義という正義
 ・文明的正義へのアンチテーゼとしての”ウー”−−『ウルトラマン』「まぼろしの雪山」

第4章  『ウルトラマン』に描かれた心の闇

 ・悪いのは誰か−−『ザ☆ウルトラマン』「怪獣とピグだけの不思議な会話」
 ・物言えぬ遺児の怨念−−『ウルトラマンタロウ』「血を吸う花は少女の精」
 ・裏切られる善意とウルトラマンAのメッセージ−−『帰ってきたウルトラマン』「悪魔と天使の間に…」
                                『ウルトラマンA』「明日のエースは君だ!」
 ・自己有用感と、すがる思い−−『ウルトラマンティガ』「悪魔の預言」

第5章  反逆する大衆とウルトラマン

 ・ウルトラマンメビウス−−大衆という脅威
 ・狙われた街、狙われない街

第6章  ウルトラマンとナショナリズム

 ・秩序という名のウルトラマン
 ・デラシオンという宇宙正義
 ・桃太郎の鬼ごっこ−−『ウルトラセブン』「300年間の復讐」
 ・怪獣使いと少年−−虐げられる者−−『帰ってきたウルトラマン』「怪獣使いと少年」
 ・戦争が怪獣を生む−−『帰ってきたウルトラマン』「毒ガス怪獣出現」
 ・悲しみの沼−−『ウルトラマンガイア』「悲しみの沼」
 ・怪獣使いの遺産−−『ウルトラマンメビウス』「怪獣使いの遺産」

第7章  ウルトラマンの正義

 ・「原理主義」から「多神教」へ
 ・「他人の力を頼りにしないこと」−−昭和のウルトラマンのメッセージ
 ・「与える者」から「与えられる者」へ−−「光」の物語
 ・戦いは何のために?
 ・本当に武器を捨ててみる
 ・非戦の哲学

エピローグ

 ・果てなき「正義の味方」願望
 ・「正義」を求める心


 
 初期の怪獣は、開発の論理の下に駆逐される自然の象徴であった。人間は、そしてウルトラマンは善悪二元論では解くことのできない難問と対峙していたのだ。そこで求められる正義のあり方について、『ウルトラ』シリーズのいくつかのエピソードを縦断して考えてみた。
 自然を擁護し、近代化や開発を批難することは容易だが、それだけでは全く建設的な意味をなさない。大切なことは相反する事象、立場とのネゴシエートであると考える。
 また、本書では中学校の国語の授業で扱った『ウルトラ』シリーズと生徒に書かせたワークシートの答えを紹介、解説を施している。

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