Opinion

言葉を知ることは世界を知ることだ

 文学作品をはじめとした様々な表象を読み解く最終的な目的は、作品の内容を正確に把握することではない。それはあくまで手段であり、そこで培った力を生かして、今度はエンドレスにページが続く「世界」を読み解いていくことこそが目的と言える。
 世界は言葉でできている。
 私たちはメディアに触れない限り、現在の総理大臣が誰なのかさえも知ることができない。それを伝えるのも全てもとをたどれば言葉だ。先進の医療も、眼前にそびえ立つ高層ビルも(スカイツリーも!)、代々継がれてきた技術によって成り立っている。先人が後生に叡智を残す手段はただ一つ。それは言葉にすることだ。
 だからこの眼前の世界は、言葉が分子のように寄り集まってできていると言える。その言葉によって書かれた作品に触れ、深奥に迫る行為はやはり、世界を知る第一歩と言える。