
SFの想像力と建築の想像力、メタボリズムなど
『ウルトラQ』と『ウルトラマン』の差異に、近未来的であるか否かという点がある。前者が「不思議な時間」というSF的な時代設定をしているのに対し、後者では近未来を時代設定しており、防衛隊である科学特捜隊の基地はオブジェ的なフォルム、戦闘機は流線型がとられるなどした。このような科学がもたらす、明るい未来というイメージは『ウルトラマン』シリーズに限った描出ではなく、1960年代の少年雑誌等で幅広く見られるものであった。その画家としては小松崎茂らが代表的だ。
『ぼくらが夢見た未来都市』が述べるのは、このような未来都市描出が、現実の建築家の想像力と共振していたことである。新陳代謝を意味する建築の思潮であるメタボリズムの担い手である黒川紀章、丹下健三、磯崎新らが未来都市のデザインを発表したのもまた1960年前後であった。同書ではこれは偶然ではなく、SF界と建築界で共通して抱いていた関心が、それぞれ現れたものだと説く。また、「当時の建築家にはSFの愛読者が少なくなかったし、SFの側も建築家による未来都市への提案を興味深く眺めていた」のだという。
なお、黒川紀章によれば、メタボリズムとは近代的な抽象的幾何学による建築の思潮を引き継ぐものだという。
『ウルトラマン』シリーズを見渡した時に、抽象的幾何学と言って思い起こされるのは実相寺昭雄の作品である。『ウルトラマン』「地上破壊工作」、「故郷は地球」、『ウルトラセブン』「狙われた街」等々では、印象的な幾何学模様-椅子やライトであったりする-が描出される。そこに寓意、イメジャリーを読み解くことも可能かもしれないが、それ以上に、ドラマの流れに直接与しない、すなわち具体性を稀薄化させたオブジェ=抽象物が画面内で印象的に呈示されているという事実に目を向けるべきではないか。
未来都市への夢想(あるいはその反転としての不安)という同時代性が、建築とSFに跨って存在していたことを、その双方における抽象的幾何学は示していたといえるだろう。(2024/10/8)